教育実践研究
第一に、障害のある子どもとない子どもが共に学び合う実践である「交流及び共同学習」における子どもの自己理解や障害理解の研究をしています。
第二に、知的障害のある子どもの授業における学習の研究をしています。
第三に、現在は子どもの授業における「創造性」に注目する学習の研究をしています。
交流及び共同学習
レビュー
日本における「交流及び共同学習」に関する論文を概観し、その特徴や限界を整理した論文。
楠見友輔(2016)日本における障害児と健常児の交流教育に関するレビューと今後の課題. 特殊教育学研究, 54(4), 213-222.
知的障害理解の構造
健常児にとっての「交流及び共同学習」を通して形成される知的障害理解の構造を明らかにした研究。
楠見友輔(2017)交流による知的障害理解の構造:障害への解釈行為としての語りに着目して. 東京大学大学院教育学研究科紀要, 56, 167-180.
弱視児のアイデンティティ
晴眼児との交流を行う中での弱視時のアイデンティティの複雑さを分析した研究。
Kusumi, Y. & Koike, T. (2019) The Social Identity of Adolescent Students with Low Vision during Interschool Interactions with Sighted Students: Voice and Symbolic interaction. Journal of Special Education Research, 7(2), 89-100.
交流の質
健常児にとっての「交流及び共同学習」の意義を「交流の質」という概念を用いて分析した研究。
楠見友輔(2017)知的障害児との交流の質を規定する条件:交流経験の語りの質的分析. 特殊教育学研究, 55(4), 189-199.
交流中の集団意識
「交流及び共同学習」の中で、健常児にとっての知的障害児との間に意識される内集団と外集団の関係を分析した研究。
楠見友輔(2018)知的障害児との交流における健常児の集団カテゴリー意識を規定する条件. 東京大学大学院教育学研究科紀要, 57, 369-380.
視覚障害理解の構造
晴眼児にとっての「交流及び共同学習」を通して形成される視覚障害理解の構造を明らかにした研究。
楠見友輔・小池貴之(2019)交流による視覚障害理解の構造:晴眼児の交流経験についての語りの分析. 特殊教育学研究, 57(1), 37-47.
軽度知的障害児のアイデンティティ
「交流及び共同学習」の中で、健常児と交流する軽度知的障害児のアイデンティティをインタビューと質的分析を用いて分析した研究。
楠見友輔(2022)健常児との交流の語りで生起する 軽度知的障害児のアイデンティティ:記述現象学的アプローチ. 質的心理学研究, (21), 110-128.
知的障害のある子どもの授業における学習研究
中度知的障害児の数学の授業における学習過程の研究
中度知的障害のある中学生がお金の支払いの授業においてどのように学習をしているかを社会文化的アプローチから検討した研究。
楠見友輔(2019)お金の支払い学習における中度知的障害生徒の学習過程と教師のフィードバック:社会文化的アプローチから. 発達心理学研究, 30(2), 101-112.
知的障害児がICTを用いた授業に参加する過程の研究
軽度知的障害児2名がICTを用いた授業の中で、教室談話に主導的に参加するようになる過程を、社会文化的アプローチから検討した研究。
楠見友輔・髙津梓・佐藤義竹(2021)知的障害生徒が教室談話に参加する過程:社会文化的アプローチから. 発達心理学研究, 32(3), 134-147.
ダウン症児の国語の授業における学習過程の研究
ダウン症のある中学生が文章理解の授業においてどのように学習をしているかを社会文化的アプローチから検討した研究。
楠見友輔(2019)ダウン症児の文章理解の学習:社会文化的アプローチによる一生徒の学習過程の分析から. 教育心理学研究, 67(4), 330-342.
単著
上の3つの研究を含む。知的障害教育の歴史と理論を概観している。日本とアメリカのインクルーシブ教育の比較から、知的障害のある子どもを含むインクルーシブ教育を困難にしている要因を抽出した。社会文化的アプローチに立ち、知的障害のある子どもの授業における学習を新しい視点から問い直した。
楠見友輔(2022)子どもの学習を問い直す:社会文化的アプローチによる知的障害特別支援学校の授業研究. 東京大学出版会